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ステミラック注とは
ステミラック注とは、ニプロが札幌医科大と共同開発した、脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞キットの製品名称です。
2018年12月に「条件および期限付き承認」で取得され、7年の内に対照群を設けて比較評価を行い、有効性、安全性が確認されれば承認が継続されることになっています。
間葉系幹細胞は神経や血管に分化する能力を有するので、患者さんの脊髄(腸骨)から局所麻酔下で骨髄液を採取して、骨髄間葉系幹細胞を約2週間かけて約1万倍にまで培養します。
培養して約1億個になった骨髄間葉系幹細胞を30分から1時間かけて、患者さんの体内に静脈内投与します。
投与された骨髄間葉系幹細胞は、損傷した背髄周囲の血管新生や抗炎症作用、脊髄神経の再生などによって、脊髄損傷に伴う神経症候や機能障害を改善すると期待されています。
「ステミラック注」は、先駆け審査指定制度対称の再生医療等製品の第1号の承認となっています。
効果・効能は「脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善ですが、但し書きとして、外傷性脊髄損傷で、ASIA機能障害尺度A、BまたはCの患者に限る」とされています。
治療を行っている病院
現在、ステミラック注による治療は、ニプロと共同開発した札幌医科大学附属病院でのみ認められています。
患者さん本人やご家族による申し込みは受け付けておらず、主治医からの紹介があった場合のみ札幌医科大学付属病院で治療を受けることができる可能性があります。
構成
ステミラック注は、骨盤に針を刺して採取した骨髄液を、患者さん自身の血液の中で培養することで、間葉系幹細胞を約1億個まで増やして製品化されます。
そのため、その構成は主な構成体である患者さん自身の骨髄液、血液に加えて骨髄液を採取するためのキット、血液を採取するためのキットが含まれています。
副構成体である骨髄液・血液採取キットは清潔な採取、培養のための運搬、分離のために最適化されています。
- ・患者さんから採取した骨髄液中の間葉系幹細胞を体外で培養・増殖させ、患者さんの血清を含む凍結保存液に懸濁し、凍結保存した細胞。
- ・患者さんの末梢血採取及び製造所への運搬に用いる採血キット。
- ・患者さんの骨髄液採取及び製造所への運搬に用いる骨髄採血キット。
治療の方法
ステミラック注を使用した治療の対象となるのは、けがによる脊髄損傷を負った方で、麻痺の程度が重い(ASIA機能障害尺度A,B,C:5段階の重い方から3番目まで)方です。また、受傷後31日以内に骨髄液を採取できる方が対象となります。
骨髄液採取の前に、2回に分けて約480mlの採血をするため準備期間が2週間必要となります。そのため、現段階では「受傷後約2週間以内に札幌医大に転院できる」ことがステミラック注による治療を受けるのに必要な条件となります。
骨髄液採取を行った後さらに採血を追加し、専門の施設で2-3週間かけて培養が行われます。その後安全性、品質試験を経て製品化が可能となりしだい、患者さんに投与されます。最終的にステミラック注は40ml程度に精製されており、これを希釈しながら60分程度かけて点滴投与します。

ステミラック注の効果と副作用
次に条件付き承認前に行われたステミラック注の治験による効果の評価及び副作用についてご紹介します。
効果
国内治験によると、損傷後1~2ヶ月以内に投与し、220日後に効果を評価したところ、13例中12例においてASIA機能障害尺度で1段階以上改善しました。その改善割合は尺度B(2例)とC(5例)の患者さんでは100%、Aの患者さんでは6例中5例で改善し83.3%の効果を挙げています。
副作用
現在のところ、ステミラック注に重大な副作用、不具合は報告されていませんが、下記のような副作用の報告があります。
- ・末梢血採取に起因する貧血
- ・骨髄液採取に起因する穿刺部位の疼痛
ステミラック注による慢性期や脳梗塞患者への治療
慢性期の脊髄損傷患者さんや、脳梗塞を始めとする脳卒中に対する治療についての現状をご紹介します。
脊髄損傷慢性期患者への治療
ステミラック注による慢性期脊髄損傷患者への治療は、現在は臨床研究段階となっているため、現時点では研究対象となる厳しい基準を満たさなければ受けることは出来ません。
前述のとおり「受傷後約2週間以内に札幌医大に転院できる」かつ、「外傷性脊髄損傷で、ASIA機能障害尺度A、BまたはCの患者さん」のみがステミラック注による治療を受けられる可能性があります。
今後、臨床研究が進むにつれ、慢性期の患者さんも治療を受けられることになることが期待されています。
脳梗塞患者への治療
ステミラック注は、脊髄損傷の急性期患者のみが治療の適応となっているため、脳梗塞や脳出血といった脳卒中患者への治療は適応外となっています。
当院の再生医療(自己骨髄由来間葉系幹細胞点滴治療)と先進リハビリの組み合わせによる脊髄損傷や脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の後遺症治療は、急性期を過ぎた患者さんでも受けられる治療です。
詳しくはどうぞお気軽にお問合せください。

ステミラック注の承認取り消しを求める批判
ステミラック注は2018年12月に独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)による「条件および期限付き承認」を受けました。
しかしながら、2020年1月に薬害オンブズパースン会議によって承認取り消しを求める要望書が厚生労働省に提出されたのです。
同会議は主に下記の点の批判をしています。
- 僅か13例の治験に基づく承認であり、国内外から批判をされていること
- 条件および期限付き承認制度は経済優先であり、安全性や有用性が蔑ろにされている
ステミラック注の承認を取り消し、制度の見直しや、安全性・有用性を確認するための臨床試験に戻すことを求めています。
ステミラック注と再生医療等製品の条件及び期限付承認制度に関する要望書
ステミラック注の保険適用、薬価
ステミラック注は2019年2月に薬価基準に収載(保険適用)されました。薬価は約1500万円(1495万7755円)です。
自己負担が3割の方は約450万円、1割の方は150万円ということになりますが、高額医療に関する制度もありますので、実際の負担金はケースバイケースということになります。
まとめ
ステミラック注は世界で初めて実用化された、脊髄損傷に対する再生医療製品です。現時点ではまだ条件付き承認ではあるものの、基礎研究の裏付けがなされた期待できる方法といえます。
ただ現時点では、早急な条件付き承認に批判があることも事実です。
最先端の再生医療に、専門のリハビリテーションを組み合わせることで脊髄損傷の症状を軽減することができる可能性があります。今後の成果が期待されます。
この施術ページの監修医師

貴宝院 永稔(きほういん ながとし)
医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役
学歴・職歴
- 平成15年3月
- 大阪医科大学卒業
- 平成15年5月
- 大阪医科大学附属病院にて初期研修
- 平成17年4月
- 大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
- 平成17年5月
- 大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
- 平成19年3月
- 大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
- 平成19年4月
- 大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
- 平成21年4月
- 医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
- 平成23年3月
- 大阪医科大学大学院医学研究科卒業
- 平成30年2月
- 福永記念診療所 部長に就任





